古い桜の木

119 :本当にあった怖い名無し:2006/03/27(月) 19:04:40 ID:XQbuAZsH0
 
うちのおかんの話。

当時おかんは、6人兄弟(男3女3)の長男の嫁として嫁いできたんだわ。 
長男の弟妹はまだみんな学生で、いわば小姑的存在。 
かなりの貧乏で、姑とお舅との折り合いも悪く、 
とくにお舅は「パチンコ代がないから子供の学費をよこせ」っていう無茶苦茶な人で、 
旦那(つまりおれの親)の庇いたても一切ない。むしろ一緒になっていびられた。 
畑仕事で毎日こき使われ、姑と旦那が悪口を言い触らしてくれているので、 
近所や旦那の親戚周りの評価といえば奴隷かなにか。嘲笑の的だ。 

味方もなく金もない。
毎日が針のむしろだったおかんはある日、赤子(おれは三人兄弟の三番目)のおれを抱いて自殺を決意したそうな。
 

120 :本当にあった怖い名無し:2006/03/27(月) 19:36:25 ID:XQbuAZsH0

家を抜け出して、春の夜中にとぼとぼとぼとぼ歩き続けて、いつのまにか地域では有名な古い桜の木の下へ。 
これが見事な桜でね、盆栽の松のような見事な枝ぶりで、 
住人の思い出や記念の場所として、とても愛された木だったんだよ。 
んで、おかんも事あるごとに、その桜のある場所に行ってたらしいわ。 
その桜がまた満開でね、月明かりに桜がはらはら散るんだよ。 



 
街灯のない時代に、その桜の白い花びらがぼんやり見えるのがまた綺麗で、 
「もうこれで見納めやなぁ。あんたにどれだけ慰められたか・・・今までありがとう」
って泣きながら桜に話しかけたら、ふと背後から「こんばんわ」。
振り向いたら、笑顔いっぱいの四角い顔したおじいさんがいたそうな。 
真夜中。おかんの手には赤ん坊。 
懐中電灯も持っていないおっさんが暗がりで笑顔。 
普通だったら恐怖だよ、女だし。これから自殺するってのに変だけど。 
けど、不思議と恐怖っていう感情がわかなかったそうな。 
んで、その見知らぬおっさんに「子供が風邪引くわ、はよ帰り」って言われて、
腕の中見て帰らなきゃと思ったらしい。 
心中しようとした人間が、これから殺す子の風邪ぐらいって思うだろ? 
おっさんの肩を横切ったところで、おかんも↑に気付いたらしい。 
それで振り返ったら、笑顔のおっさんがいないの。桜の木があるだけ。 
ちなみに、おっさんは死んだ曽祖父(写真が飾ってある)でもなけりゃ、地域住人でもない。 

今はその桜の木も、住人の反対の声も空しく工事の関係で切られたけど。 
桜の精っていうのかな?あるんだな、こういうの。おかげでおれ生きてるし。 
以上、おかんの昔話でした。