鬼猿

388 :死ぬ程洒落にならない怖い話:2010/10/20(水) 23:30:44 ID:IWuCVqVXO

爺様に聞いた話。 

爺様は、御年93才。 
20代から80過ぎて足腰が弱るまで猟に出てた。 
猟といっても職業でなく、冬季の猟期のみ趣味と実益を兼ねてらしい。 
その筋では結構有名な爺らしく、20年近く地元の猟友会長をやってた。 


388 :死ぬ程洒落にならない怖い話:2010/10/20(水) 23:30:44 ID:IWuCVqVXO

んで、彼岸に墓参りに帰った時、洒落怖で気になった話を聞いてみた。 
半惚けなんで聞き取るのに非常に苦労したが、そういう物はおったとの事。 
地元では『鬼猿(きさる)』とか『食猿(くいざる)』とか呼ばれていたらしい。 
昔から、猟をする連中の間で先輩から教えられている。 
「ここいらだけでなく、そんな物は山じゃあっちこっちに居らあ」と言ってた。 

別に定期的ってわけではないらしいが、何年かおきに獲物が居なくなる地域がでる。 
そんな山に入ると、まず連れている猟犬が異常に怯えるので、何となく判るという。 
また、奴に近づくと、獣臭とはあきらかに違う血生臭さを感じる。 
姿は大体が猿だが、熊や猪の場合もある。奴らは仲間でもなんでも皆食ってしまう。 
そんな時にはすぐ山から出て、そこら一帯の山は2~3年あきらめろ。 
もし山に入っても、そこで獲った獲物は触るな・持ち帰るな、触ると移るぞ、と爺様は教わったとの事。 

爺様が実際にそれらしき物に遭った時はまだ40代の頃、猿だったという。 
教えられたとおり犬は騒ぐし、近くに獲物は居らず、臭かったという。 
近くに普通より一回り大きい挙動不審の猿がいて、
これがそうかと思った途端に怖くなって、直ぐ山を降りたそうだ。 

「なんで猿なのか」と聞いてみたところ、
「猿は群れるから、しばらく食う物に困んねえからかな」って笑ってた。 



389 :死ぬ程洒落にならない怖い話:2010/10/20(水) 23:32:18 ID:IWuCVqVXO
 
爺様の所には、今でも後輩から猪・鹿・熊肉などが届けられていて、たまには山の話が集まってくる。 
60才位までは、どこの山に食猿が出たとかいう話がちらほらあったというが、
ここ30年位全く話を聞かなくなったという。 

これは爺様と俺の推測だが、爺様は「町の馬鹿奴等が連れてったんじゃねえか」との事だった。 
爺様の住む村も年々過疎化が進んでおり、村の猟人口も減少する一方である。
それに反して、村から出ていった者の伝で、猟に参加させて欲しいという申し込みがどんどん増えている。 
詳しくは判らないが、猟をするには地元の住民でも、各々テリトリーが決まっており、 
地元住民と同行しなければ許可されないらしい。
最近は地元住民でさえ、爺様連中の話は迷信と考えて、小馬鹿にしたような態度をとるものがいるというから、
そいつらは町の連中にこんな話をしないだろう。
話を知らない者が、山に猟に入り散々獲物を探し回った挙句、やっと獲物を見つけたとしたら、
喜んで仕留めるだろう。
猿だったとしたら、おそらくあきらめるだろう。
爺様も、「猿は人間に似ているから撃ちたくないない」と言っている。 
だが、猪や熊だとしたら喜んで持って帰るんじゃないか? 
「人間に移ったらどうなんの」と聞いたら、 
「俺も見たわけじゃねえから判んねえよ。おんなじようになるって事だろ」と言われた。

爺様としては、山の中が静かになって喜ばしいみたいだ。 

これはキヒサルという話と同じようなものだろ。


696:名前:643:03/11/19 15:06

【夢魔?】ヒサルキ/ヒサユキ【ネタ?】

ずいぶん昔に聞いた話なので、ところどころ記憶が曖昧なのですが、
『ヒサルキ』という名前と、>>217-219の話に共通点があると思うので、書いてみます。 

村の年寄りから、キヒサル(キヒザル)という話を聞いたことがあります。 
聞いただけなので字は分からないですが、話の内容からすると、『忌避猿』となるのかもしれません。 

キヒサルは、群れからはぐれた猿を狙って、体の中に入り込みます。
乗り移られた猿(以下キヒサル)は獣を殺し、その肉を食うようになります。
また、その外見を利用して猿の群れに近づき、手当たり次第に殺して食べます。
その食欲は尋常ではなく、キヒサルが現れた山では獣の数が一気に減る、とまで言われています。
結果、山には獣の死骸がゴロゴロ転がることとなり、それで猟師や杣は、キヒサルの存在に気付くのです。 
共食いをするキヒサルを、特に猟師は忌み嫌います。
ただ、トラバサミや柵で捕らえても、キヒサルの本体(ヌシ)は乗り移った体(グヨリ?)から逃げてしまいます。
(そんな時、残されたクヨリは抜け殻のように、がらんどうになっているそうです)
また、鉄砲で撃っても、キヒサルはなかなか死にません。 


697:名前:643:03/11/19 15:07
 
だからキヒサルが現れると、猟師と杣は手分けして山狩りをします。 
人と違って、キヒサルは道を通るとは限らず、
その一方で、火や金物の音を恐れるので、松明を持って銅鑼や半鐘、鍋などを叩いて、
山裾から山頂へ追いやるようにします。
キヒサルが近くにいる気配は匂いで分かるそうです。
(私が聞いた話では、キヒサルが近づくとサビのような匂いがする、となっていましたが、 
 これは金気臭い匂いではないかと推測します)
キヒサルを見つけても、間違っても触れてはいけません。
(ただ、その理由や、触るとどうなるかは覚えてません)

山狩りに参加した人は、ひたすら山頂近くに設置した罠のところへキヒサルを追い込みます。 
草を刈った平地に追い込んだら、木の上に渡してある油を染みこませた布を、キヒサルの上に落として捕らえ、
すぐさま焼き殺します。
ヌシの姿を直接見ると目が潰れる、と言われているので、このような方法を使うのだそうです。 

キヒサルの起源は分かりません。
もしかしたら、何らかの伝染病(狂犬病みたいなもの)に対する恐怖が、
このような怪物(妖怪?)を創造したのかもしれませんが、
猿を媒介する伝染病が当時の日本に存在したのかは、私の知識ではなんとも言えません。


699:名前:643:03/11/19 15:11

【夢魔?】ヒサルキ/ヒサユキ【ネタ?】スレの217-219のコピー。

>>134 
関係ありそうなんで書き込みます。 

私はずっとある村に住んでいるんですが、小学校の頃、一度だけ不可解な体験をした事があります。 

私は友達何人かとで、川でザリガニを採っていました。
捕まえたザリガニを決闘させるために、一旦岸に上がったのですが、
その時、山から出てきた赤っぽい犬が、田んぼを横切ってこっちへ歩いてくるのが見えました。 
ヨタヨタとふらつきながら近づいてくるにつれ、私はその犬がケガをしていることに気が付きました。
もともと白い犬だったのが、毛皮が血だらけで、だから遠目に赤っぽく見えたのです。
頭や手足、口や目からも血がポタポタと滴り落ちて、息も荒く苦しそうでした。 

そいつは急に、私達の方に頭を向け走り出しました。
ケガのせいかスピードは遅いのですが、騒がしく吠え立てることもなく、
ひたすらフッフッフッと荒い息を吐きながら、ジグザグにこっちに向かってくるのが、逆に不気味な感じがしました。 
「おい!山犬がこっちに来るぞ。逃げようぜ!」
友達もあわてて川から出て、靴を履いて逃げ出しました。
犬は方向を変えて、私達の後を追いかけてきます。
近づくにつれ、足が折れて白い骨がはみ出しているのが分かりました。 


700:名前:643:03/11/19 15:13
 
「ぉおい!何やっとんだ!逃げぇ!お前ら!」 
怒鳴り声がしたので振り返ると、山犬の後ろを走るおじいさんの姿が見えました。
林業をやってる修さんが、鉈を持って凄い形相です。
修さんは私らのすぐ後ろで犬に追いつくと、鉈を振り回しました。 
「お前ら!村で大人呼んでこい!」 
犬は、修さんに近くにあった棒きれで滅茶苦茶に叩かれていましたが、
吠えも鳴きもせずに、相変わらずフッフッフッと息を吐いてぐるぐる回っています。 
よく見ると、殴られる前から全身傷だらけだったみたいで、
毛皮がいろんな所で破れて、赤い肉と白い骨がはみ出ていました。
腹から内蔵だかなんだか、正体不明のものが何本かぶら下がっていて、
口は血だらけで開いたまま、そこから黒っぽい小豆色の舌がブラブラ垂れ下がっています。
耳も破れて取れかかっているし、目は真っ黒で潰れているのかもしれない。
そんなボロ切れみたいな状態なのに死んでなくて、声もなく暴れている山犬を見ていると、
小便ちびそうなくらい怖くなってきました。 
「なにボーっとしてるんだ。早く逃げんかい!血がかかるぞ!」 
修さんが鬼のような形相で怒鳴るのを見て、私は村の方へ走って逃げました。
友達がゲエゲエ吐きながら、少し遅れて走ってきます。 


701:名前:643:03/11/19 15:15
 
私と友達は、村の集会所へ連れて行かれました。
窓から外を見ると、村の大人が犬の所に集まって大騒ぎになっていました。
しばらくして煙が上がったと思うと、あたりにも物凄い臭いが漂いはじめました。
後で聞いたら、犬に油をかけて焼いたそうです。
私と友達は臭いとさっき見たものの気色悪さに、便所で吐きまくりました。 

その日のうちに、私達はお寺へ連れて行かされました。
坊さんは警察みたいに、犬を見た時間や場所や、その時の状況なんかを詳しく聞いてきました。 
腕に包帯を巻いた修さんも来ていて、私達の後でお堂の中に呼ばれました。 
その後、修さんと一緒にお経を読まされたり、お札を焼いてその煙をかけられたりしてから、
ようやく帰っていいと言われました。 

帰り際、友達が坊さんに「あの犬は何だったんですか?」と聞くと、
坊さんは「化け物に憑かれたんだ」と言いました。
猿を捕まえて、中に入り込んでしまうそうです。
「本当は猿に化けるが、最近は猿が減ったので、犬に化ける」とも言っていました。

後で修さんに聞くと「ヒサル」だと言っていました。 
どんな字かは分かりませんが、たぶん『被猿』じゃないかと思っています。


関連話:【洒落怖】鬼猿とヒサルキ伝説