山と友人

97 :オマージュ:04/07/29 18:29 ID:msptMyCw
 
友人に天気がわかる人がいる。 
的中率何パーセントとかいうレベルではなく、ずばり当ててしまうという。 

ある時、日の出を拝むため山に登り、山小屋で仮眠をとっていざ目覚めてみると、
外はものすごい土砂降りになっていた。 

他のグループが諦めて寝直しにかかる中、彼一人外に歩き出した。 
それを見た山小屋の親爺が慌てて、
「危険だから今日はやめろ、この雨は当分止まない」と引き止めたそうだ。 
絶対に晴れると確信していた彼は、親爺を振り切って歩き出した。 

果たして、雨はほどなく止み、頂上で日の出を拝みながら彼は持参の酒を一杯かたむけたそうだ。 

ちなみに下山するとき、再び雨が降り出した。 
山小屋に戻ると、親爺が「ほら見ろ、いわんこっちゃない」とあきれる声が聞こえた。 
どうやら、そこでは一日中雨だったらしい。 
彼は説明するのがめんどくさいので、「失敗しました」と言って笑っておいたそうだ。


98 :オマージュ:04/07/29 18:30 ID:msptMyCw
 
その友人の話

彼が山登りをしようと計画した週に、台風が直撃したことがあった。 
友人は既に諦めモードだったが、彼は絶対この雨は止むと信じていたので、 
友人に計画通り荷造りしておくように電話した。

果たして当日、台風一過すばらしい青空が広がっていた。 
友人は喜んだが、彼は釈然としない。感じたことのない違和感があった。 
まだ、水の気配がする。もう一雨くるのか?
「道がぬかるんでいるから」とか適当に理由をつけて、彼は登山をやめさせた。 

その日の夜、夕食を食べていると、友人が電話をかけてきた。 
『今すぐテレビをつけろ』というので見てみると、ニュースで山が映し出された。 
観光客数名が鉄砲水に飲まれて行方不明だという。
彼が登ろうとしていたまさにそのルートだった。
この事だったのか。彼はぞっとした。 
何もしらない友人は、『俺達は運がいい』と無邪気にはしゃいでいたそうだ。 




101 :オマージュ:04/07/29 18:31 ID:msptMyCw

 
さらに友人の話

百発百中の精度を持つ彼だが、その能力が全く働かなくなってしまった事がある。 
それは霊峰とよばれる、とある山に登った時のことで、
彼は晴れると思っていたのだが、激しい夕立にやられ、あげく霧に迷って、
にっちもさっちもいかなくなってしまった。 

「おーい、おーい」と情けない声で助けを呼んでいると、男の高笑いが聞こえたそうだ。 
決して不快な声ではなく、楽しんでいるような声だったという。 
ほどなくして霧は晴れて、彼は無事下山できたそうだ。 

その後あらためてリベンジしたが、晴れると思った天気は季節外れの雪となり、 
寒さに根をあげた彼はほうほうの呈で逃げ出した。 

「どうもその山にからかわれている気がする」と彼はぼやいている。