海の怪物

578 :オキ :03/02/03 08:27
 
海には皆さんも御存知の通り、妙な生き物が沢山いるみたいですが、
その中の一つにであったという、父の話を一つ・・・


579 :オキ :03/02/03 08:50
 
「ようけ魚見てきたけど、いろんな海にはもっと凄いのがおるだらぁなあ。多分まだ100分の1も見てないけん」
と、苦虫を噛み潰したような顔をする父。 
これは父が、自分が出会った最初で最後の魚(?)の話。

ある年のお盆も過ぎた頃、父と父の友人はイカ釣りに出かけました。 
(もうこの頃は、同じ時刻に毎日行きます。だいたい夕暮れ前に出て、10時前後に戻ってくる) 

その日、父はいつもより早く帰ってきました。
どれ位釣れたのかと見てみると、なんとゼロ。 
大漁の時は、他の同じ規模の船の倍、他の船が水揚げがナシでも、何かしらの成果で帰ってくる、
地元でその道の人の中では有名な父です。 
はっきり言ってあり得ません。 
私は何かがあったのだと思いました。(船のトラブル?海が時化てきた?・・・) 

すると父は、コップに冷や酒を注ぎながら語りだしたのです。




580 :オキ :03/02/03 09:10

 
その日はとても良い凪ぎで、外海にでてもあまり波も無かったそうです。 
イカ釣りは、仕掛けと明かりが命だといいます。
船の照明をこうこうと焚き、その光に海中の虫や小魚が集まり、それらにイカが・・・と。 

そしていつものように明かりを焚き、いつものようにいろんな物が集まって来たので、
頃合をみて仕掛けを下ろしました。 
その時、友人が何かを発見して父を呼んだそうです。 
まだ何メートルか下にいるそれを、父と友人は暫く眺めていました。 
『それ』は暫く時間をかけて、ふわ~っと海面近くまで上がってきて、
やっとその姿らしき物がハッキリしてきました。 

皆さんは、カワハギという魚を御存知でしょうか?なかなかユニークで顔はかなりマヌケです。 
そしてこの魚は釣り上げると分かるんですが、「ブィ、ブィ」というような鳴き声を発します。


581 :オキ :03/02/03 09:42
 
『それ』は、そのカワハギを真横にしたような姿で、目もおかしな位置に付いているのが見てとれます。 
(ヒラメやカレイのような位置ではなく、ちゃんと両サイドに付いている) 
そして『それ』等は四匹で、一匹を先頭に綺麗なひし形の群を成していました。 
一匹の全長は40cm位でしょうか。
見たことないなぁ。気持ちわりぃ。
と思いながらも、父は自分の興味を抑えきれず、タモを持ち出しその中の一匹をすくいあげました。
『それ』はあっさり引き上げられ、船の上にほおりだすと、 
「ギギギィィィ!!」と、今までに聞いたことも無い声で鳴いています。
それもかなりデカイ。もう絶叫といっていい程の声で。 

父はその魚をジィーーーっと見てみました。 
『それ』には瞼も付いていました。二・三度瞬きらしきものをしたかと思うと、
父はおもいっきり・・・ニラまれたそうです。 
その時父は何故か直感で、「もう一匹おる」と思ったそうです。
その瞬間、船が凄い横波をくらい、ほぼ真横に90°近く一回傾きました。
父は「これはヤバいもんだ!」と感じ、急いで『それ』を海に放ちました。


582 :オキ :03/02/03 10:05
 
凄い横波は、一度でおさまっていました。 
父は一息つき、船の周りの様子を調べ始めました。 
おかしいのです。 
さっきの魚(?)はおろか、先ほどまでいた虫やら小魚すら一匹もいません。そして海が不自然に暗いのです。 
父は悟りました。 
今、船の下には、船より大きな何かがいると。 
海でパニクると、大変な事になるのを知っている父は、
まだ何も気付いていない友人にそれを悟られぬよう、船の中央近くによび、 
「変なもんみたけん、ちょっと酒でも飲むか」と、しばしの酒盛りを始めたそうです。

そしてしばらくすると、また虫や小魚が集まり始めたのがわかり、
その後しばらく釣りをしたもののアタリもなく、父と友人は早めに帰ったとのことでした。 

「まぁ、あんなもんもおるわな」と、父は酒を片手に笑っていました。

そんな父の夢は、この歳で口にする言葉じゃないんですが、『シー・ハンター』です(ワラ 
(何処で覚えてきたのか、それ以来「カッコイイ」と連発している)