壊れたテレビ

512 本当にあった怖い名無し 2006/01/29(日) 20:51:52 ID:AqttN5ndO 

電話やテレビ、ラジオなど、所謂メディアにまつわる怪談は多い。
その殆どが、どこかに繋がってしまうというパターンを踏襲している。
便利さの反面、直接的ではない伝達に、人間は恐怖心を抱くのだろうか。
今から話すのも、それに類似したありふれた体験のひとつ。 

中学二年の夏休み、心霊ツアーと称し、五歳上の従姉妹と他県まで遠征した。
目的地は、某県にある公営団地の廃墟。
これはかなり有名な場所で、仮に心霊スポットではなくとも、廃墟好きの俺にはたまらないものがあった。 


512 本当にあった怖い名無し 2006/01/29(日) 20:51:52 ID:AqttN5ndO 

到着したのは、まだ陽のあるうちだった。
立ち並ぶ無人の団地と、そこかしこに残る生活の痕跡は、確かに噂通りの偉容だった。 
草が伸び放題の空き地にぽつんと置かれた三輪車。錆びた鉄製のドア。引き出しに衣類がしまわれたままのタンス。
そして周囲は緑深い山々。
団地全体が、本来あるべきではない違和感を放っていた。 

何となく腰が引けてしまった俺とは対照的に、従姉妹は次から次へ無遠慮に見回っていた。
オカルト好きで変わり者のこの従姉妹は、普段は何を考えているのか分からなかったが、
こういうときは頼もしかった。 



513 本当にあった怖い名無し 2006/01/29(日) 20:53:59 ID:AqttN5ndO 

ある棟の一部屋に入ったとき、俺はあまりの異様さに目を見張った。 
その玄関には靴が脱ぎ散らかされ、コンロにはフライパンが置いてあり、押し入れからは布団が崩れだしていた。
確かに生活感の残る部屋は幾つかあったが、これはまるで住人が、日常の中で忽然と消え去ったかのようだった。
ついさっきまで、誰かがいたような。 
有名な幽霊船の逸話が脳裏に蘇った。
事実、四つの椅子が並ぶテーブルには、箸や茶碗などが並んで埃を被っていた。
今まで気にならなかった静寂がやけに耳をつく。
緊張したまま奥の部屋を覗くと、雑誌やレコードが散乱する中に、古ぼけた小振りのテレビが鎮座していた。 
小さな四つ足の台に載ったテレビはダイヤルつきで、その頃でもまず見かけなくなっていたタイプだった。
全体を覆う赤いプラスチックが、妙な懐かしさを感じさせる。高度経済成長センス、というか昭和テイスト。 
手を伸ばしダイヤルを回すと、ブンと低い音がして、画面がゆっくりと明るくなった。
俺は驚いて見守ったが、そこには砂嵐が映し出されるだけだった。 
いつの間にか隣りにいた従姉妹が、「日が暮れるしもう帰るよ」と言って、ダイヤルを回しテレビを消した。
窓の外を見ると、確かに暗くなり始めていた。 


514 本当にあった怖い名無し 2006/01/29(日) 20:55:58 ID:AqttN5ndO 

車に戻り暫く道を走ると、従姉妹がため息をついて言った。
「凄いもん見つけたね、あのテレビ」
俺が何のことか分からずにいると、従姉妹は続けて言った。 
「さっきまで視線を感じてた。団地からずっと追ってきてたよ。多分、あんたがテレビつけたときから」 
今更ながら、徐々に焦り始める俺を尻目に、従姉妹は言い切った。 
「あんな場所に電気が通ってるわけないじゃない。あのまま見てれば、何か面白いものが見れたかもね」 
俺が「テレビの内部に蓄電してることもある」と言うと、従姉妹は「じゃあ戻って確かめる?」と言った。
俺は即座に拒否した。 

後日、従姉妹から聞いた話では、やはりあの団地は通電していなかったらしい。
あの後ひとりで行って確かめて来たと、小さな常夜灯を指差して言った。
それをコンセントに差して確認したのだろう。これにはさすがに呆れた。 

しかしその後、従姉妹はもっと驚くことを口にした。 
「テレビの電源入れようとしたんだけどね、入らなかった。
 あんたのときについて、私のときにつかないって、ムカついたから、持って帰ってきて分解しちゃった」 
そう言って笑う従姉妹の部屋には、確かに見覚えのある赤いプラスチックがあった。