独立記念日

37 :16:03/07/22 18:06

六年前の事、当時私は衣料買い付けの仕事で各国を訪問していました。その頃は日本で空前の古着ブーム。 
私は北米地区担当として、ほとんどアメリカ全土を周っていました。


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リーバイス501のレア・モデルが大量に在庫されているうわさを聞きつけて、
ジョージア州アトランタに飛んだのは初夏を過ぎた6月末のことです。 
事前にアポを取り付けていたにもかかわらず、先方の担当者が長期休暇で不在。 
商談は難航しましたがなんとか契約に漕ぎ着け、一安心して宿泊先の安モーテルに帰ったのは深夜でした。
日本への報告を済ませ、シャワーを浴びようとバス・ルームの灯りを点けた時、
私の後ろに男が立っているのが鏡に映りました。 
「!?」 
強盗だと思い、あわてて振り返るとだれも居ません。
しかし鏡には私とその後ろに立つ男がしっかりと映っています。 
不思議な事に恐怖感はありませんでした。
そもそも心霊話、怪談の類は昔から好きでしたので、私は男の観察を始めました。 
男は立派な髭をたくわえ、昔の軍服を着ています。




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その軍服はあちこちがボロボロで、肩と腹のところが赤黒く汚れていました。 
片目はありません。残った方の目は綺麗な緑色だったのですが、とても悲しそうな目でした。 
見ているうちに私の目から涙があふれてきました。
恐怖ではなく、強い悲しみの感情が湧き上がってきたのです。 
どのくらいの時間が過ぎたのか・・・男が「スゥ」と部屋の窓を指差してそして、消えました。 
涙をタオルで拭きながら窓のカーテンを開けると、部屋の真向かいの草原を兵隊たちが行進していました。 
その日の日付ははっきりと覚えています。
七月四日。独立記念日でした。