おいで

844 :本当にあった怖い名無し:2005/07/12(火) 20:17:30 ID:WPQDXNfl0

先週、不思議な話を聞いたので書いてみる。 


844 :本当にあった怖い名無し:2005/07/12(火) 20:17:30 ID:WPQDXNfl0

(以下、話者) 
春先、相棒とふたりで沢の水質を調査するため山道を進んでいた。 
町からそう遠くない低い山ではあるが、辺りには雪が残り空気も冷たい。 
ふと、相棒が足を止めた。 
どうしたんだ、と尋ねる間もなく、相棒は『向こう』といったふうに顎をしゃくる。 

見ると、十数メートル程先の低い木の枝に手が乗っている。肘から先だけだ。 
しかもその手は、おいで、おいで、をしている。 



844 :本当にあった怖い名無し:2005/07/12(火) 20:17:30 ID:WPQDXNfl0

さて、どうしようか。戻りたい。でも仕事はまだまだ終わらない。 
結局、(何も見たい、知らない!)と強引に突っ切ることにした。 
ふたりで駆け抜ける。 

その下まで来たとき、木からパサリと何かが落ちた。 
反射的に振り向く。 
それは、ただのゴム手袋であった。淡いピンク色が丁度人間の肌の色に見えたようだ。
おそらく、山菜取りに来た人が忘れていったのであろう。 

しかし、手袋は木に引っかかっていたのではなく、枝の上に乗っていた。 
手先を上にして。しかも、そよ風ひとつ吹いていなかった。 
狐にでもからかわれたようだと思ったという。