時空の古本屋

39 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:07/03/02 11:55

俺は小学生の時(から高校までずっと)、遠くの私立の学校に電車で通ってたので、地元に友達って一人もいなかったのよ。
んで、両親は共働きだったんで、毎日親が帰ってくるまで俺は家で一人で遊んでたんだ。
つっても一人で遊べるようなおもちゃなんてほとんど持ってなかったし、何してたかっつうと、ずうっとマンガ読んでたのね。

うちの親はファミコン禁止にしてたくらいで、マンガもほとんど買ってはくれなかった。
だけど、ただ月の小遣いに500円と、あと小1の頃から片道1時間超かけて通学してたから、途中でのど渇いたらジュース買っていいってことで、毎日100円もらってたのよ。
そのお金でマンガを買いまくってたわけだ。でもそれだと月3000円くらいじゃない、10冊も買えないんだよね。

もうあっという間に読み終えちゃう。だからいっつも、もっとマンガ買いたい、もっと読みたいって思ってた。


39 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:07/03/02 11:55

で、小4くらいだったかな、ある時、どうも世の中には古本屋というものがあって、そこではマンガが安く買えるということを知った。
しかもちょうどよく駅から家までの途中に古本屋があったのよ。

はじめてそこにおそるおそる入った時には驚いたね。だって、色んなマンガが100円かそれ以下で売ってるんだよ。
もうそれ以来、毎日100円を握り締めてその店に通うようになったとも。でもさ、所詮その店は町の古本屋さんなわけで、在庫なんかたかが知れてるさね。
もちろんたまに入荷はあるんだけど、毎日1冊買ってりゃそりゃあそのうち買うものもなくなるわ。

全然面白くなさそうなのでも無理矢理買ったりしてごまかしてたんだけど、(小学生で実験人形ダミー・Iスカーとか買う俺も俺だが売る店主も店主だ)、やっぱりだんだん物足りなくなってっちゃったのよ。
そんなわけで、その店だけでは飽き足らなくなった俺がどうしたかと言うと、新たな古本屋を探し始めたわけです。



39 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:07/03/02 11:55

当時住んでたとこはまあ田舎ってわけでもなし、自転車で遠出すれば簡単に別の町に行けたからね。
で、結果的に、意外にけっこう近く、自転車で15分くらいのとこに別の古本屋を見つけたわけですよ。
それが、家を出て左の道を進んでったところで、駅とは反対の方向だから、子供の頃から全く行ったことがなかったとこにあったんだ。

なんか小さなショッピングモールっていうの?ひとつの建物の中に4~5軒、おもちゃ屋とか駄菓子屋とか肉屋とか入ってる建物があって、道をはさんでその向かいに、って説明しても意味ないけどさ、まあそれくらいはっきり道順も風景も覚えてるってこと。
その店にはもう感動したよ、今まで見たこともないような、でもものすごく面白そうなマンガがずらりと並んでてさ。
まあでもやっぱり買えるのは1冊か2冊だから、一生懸命選んで選んで買って。ほくほくしながら帰って読んだら、予想通り本当に面白いし。

ただ、その店にはそんなにしょっちゅうは行かなかったんだよね。せいぜい何度かってくらい。
っていうのも、その店は小さいんだけど品揃えがすごいから、いつ行っても、あれも欲しいこれも欲しいってなっちゃって、結局買えないのがつらくてたまらないからってのもあった。
でも正直なところ、どうしてそんなに行かなかったのかは覚えてないんだよね。

今になってみると、行かなかったんじゃなくて、行けなかったのかもしれないって思うんだけど。


39 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:07/03/02 11:55

まあとにかくそんな風に古本屋に通ってはマンガを買ってた小学生時代だったんだけど、中学に入ってからは部活が忙しくて帰りが遅くなったりとか色々な理由で、あんまり古本屋に行かなくなったんですよ。
駅からの途中にある最初の店はそれでもそれなりに寄ったりしてたんだけど、二番目の店はちょっと出なきゃいけないってのも面倒だったし。
んで、高校になって今も住んでるところに引っ越したわけです。

不思議なのはここから。
高校になって受験勉強とかしてる時って、やっぱまあ色々つらいので、小学生時代を懐かしんだりするよね?
で、思い出されるのはなぜかいつも二番目の店だったわけだ。しまいには夢にまで見るようになってさ。
それで、とうとう、何年かぶりにあの店に行ってみよう、と思ったわけ。

駅からほんの数年前まで毎日通ってた道を懐かしんだりしながら家まで歩いて、そこからあの店まで、歩きだと30分くらいかな?
ここをこう行って、ここで曲がって、そうそう、ここの家がでかい犬を飼ってて――で、はたと立ち止まってしまったのよ。
(なんかもう想像ついてるだろうけど)あの店が、というより、あの店まで行く道がない。あとひとつ角を曲がれば、あのモールの建物と向かいの古本屋があるはずなのに。

もう何度も確かめたよ。少し先まで行って曲がってみたり、いったん戻って行き直してみたり。
それでも、そこで曲がるはずの角がどうしても見つからない。
というか、T字路だったはずなのに、右の棒の部分の道がなくて、逆L字になってるんだよね。

その日は夕方だったから間違えたのかも、と思って、次の日曜に行ってみたりしたけど、やっぱりどうしても曲がり角は見つからなかった。
そんで、ふと気づいたんですよ。
俺は前述の通りマンガに対する執着がものすごく強かったから、引越しの時もマンガは1冊も売ったり捨てたりしてないのね。
しかもそのどれも何度も何度も読んでるから、全部完璧に覚えてるのよ。なのに、あの店で買ったマンガがどれだったか、全く思い出せない。
あんなに面白い面白いって読んだはずなのに、どんなマンガだったのかさっぱり覚えてないんだ。

なんかそれに気づいてからは、無理に探したりしない方がいいのかも、とか思うようになった。よくわからないけど、そっとしといた方がいいものなのかなって。
ちなみに、社会人になった今でも、つらいことがあるとあの古本屋の夢を見るんだよね。
高校の時からずっと同じ内容なんだけど、家の前から左の方に記憶どおりに進んでいくと、簡単にあの店まで行けるのよ。
変わらず小さいけど良い品揃えで、面白そうなマンガばっかりで。
で、小学生の時よりはるかに金持ってるから、大人買いしようとするんだけど、なぜかいつもどうしても買えないんだよね。
急に人がいっぱい店に入ってきて押し出されちゃったり、逆にレジにも誰もいなくて何度呼んでも出てきてくれなかったり。
そのうちに、あ~あ、そろそろ帰らなくちゃな、って気がして、目が覚めるんだ。

いつになったら買えるのか、自分でも楽しみにしてるんだけどね。