社のおっさん

104:本当にあった怖い名無し:2008/09/23(火)16:50:22ID:lTG3rCYD0

山で生活中の俺が話しますよ。

家の周りの山の中には、ほこらや社殿(しゃでん)が結構ある。
たいていは道沿いにあるが、たまに人目の付かないヤブの奥にあったりする。

俺も全部は把握していないので、今でも散歩中に新しいものを見つけたり。
半年ぐらい前にも、小さな社(やしろ)を見つけた。

その社は、山の斜面にクネクネ続く舗装された車道沿いにあって、車で走っていると見つける事は難しい。
周りも竹ヤブに囲まれていて、俺が見つけたのは本当に偶然だった。
賽銭箱があったので拝殿だとは思うが、それにしては少し小さい。

俺が2メートルくらいまで近付くと、社の中からオッサンが顔を覗かせた。
丁度、社の戸が少し開いていて、そこから顔だけ出している形だった。


105:本当にあった怖い名無し:2008/09/23(火)16:51:27ID:lTG3rCYD0

かなり驚いたが、オッサンの方は冷静な様子で俺を見つめていた。

浮浪者かとも思ったが、この辺りでそんな人を見た事は無い。
社を掃除でもしていたのかと思って、俺は軽く一礼してみた。
すると、オッサンが

「○○か?」

と尋ねて来た。
俺には聞き覚えのない人の名前だったので、
 
「いいえ」

と言った。
すると、また

「○○か?」

と別の名前を言って来た。
さすがに気味が悪くなったので、首を横に振ってヤブを出ようとすると、後ろで戸がきしみながら開く音が響いた。

俺は、オッサンが追いかけて来ると思って、急いでヤブから車道に飛び出した。
少し走ってから振り向くと、オッサンが追いかけて来る様子は無い。
ホッとした俺は、そのまま家に帰る事にした。




106:本当にあった怖い名無し:2008/09/23(火)16:52:25ID:lTG3rCYD0


山を下りる途中、誰かが呼ぶ声が聞こえた。

オッサンの声だと分かったが、聞こえたのは上の方だった。
見上げると、6~7メートルある杉の木の上にオッサンの顔が見えた。
そこで気付いたのは、オッサンの身体が妙に小さい事。

人面猿みたいな印象だった。
見上げていると、オッサンが上から

「○○だろ。」

と言った。
俺の名前だった。
途端に怖くなって立ちすくんでいると、オッサンは

「お前の家には×△○があるから、××にも気負うなと言っとけ。」

というような事を言った。
この××というのは、俺の親父だが他界している。
×△○というのは、よく聞き取れなかったが方言っぽい響きだった。

オッサンは杉の木を少し揺らして消え、俺はガクブルで帰宅。
家族に言おうか迷ったが、それとなくオッサンの存在を祖父母に聞いてみた。


108:本当にあった怖い名無し:2008/09/23(火)17:02:03ID:lTG3rCYD0

祖父母によると、山には「そういうもの」が昔からいるらしい。

もしかしたら、親父も生前に会っていて、何かあったのかも知れないという話をされた。
そうなると、×△○の言葉が気になって来るが、分からず終い。

時間が経つと怖さは薄れ、逆にオッサンに会いたくなって行った。
何度か社に行ってみたが、あれ以来オッサンには会っていない。

その後、親父の日記がある事を思い出した。
日記を読んでいる内に泣けて来たが、オッサンに関する記述はなし。

ただ、3年前の約一ヶ月、日記を書いていない期間があった。
この間に何があったのか色々と探ったが、特に何があったでもない。