356 :本当にあった怖い名無し:2012/01/12(木) 20:19:53.12 ID:sHHgFYOO0
駅の構内の喫煙スペースで、私はタバコを吸っていました。
喫煙スペースと言っても田舎の駅なので、ホームの端っこにぽつんと灰皿が設置してあるだけの簡易的なものでした。
すると、小奇麗な老紳士といった出で立ちの男性が後からやって来ました。
軽く会釈をすると、彼は懐からタバコの箱を取り出して、タバコを口に咥えました。
手を滑らせた男性の手から落ちた箱が、蓋の開いたまま私の足元に落ちたので、
私は拾い上げて蓋を閉めて返そうと思ったのですが、奇妙なことに気付きました。
確かに男性はその箱からタバコを取り出しました。
しかし、20本入りのその箱の中にはぎっしりタバコが詰まっており、一本も取り出した形跡が無いのです。
妙だなと思いながら、男性に箱を返そうと男性の顔を見ると、どこかで見覚えのあるような顔の気がします。
不躾に彼の顔を見ながら、「どこかでお会いしたでしょうか?」と尋ねました。
男性は、
「私も歳なもので、最近は咄嗟に人の顔を思い出せないのです。
でもこの狭い片田舎ですし、どこかでお会いしたのかもしれませんね」
と、にこやかに返してくれました。
それから妙に話しやすい雰囲気の彼に、
私は世間話から普段誰にも言わないような仕事の愚痴まで、
自分でも『私はこんなにお喋りだっただろうか』と思うほどいろいろな話をしました。
彼はそんな私の話を嫌な顔一つせず、にこにこ笑いながら、時折うんうんと相槌を打ちながら聞いてくれました。
【不思議】老紳士と喫煙スペース続きを読む