俺が高野山に住んでいた時、こんな噂話を聞いた。
曰く、
「昔、坊主専用の廓が、山のどこかにあった」
「その廓は終戦後取り潰されて廃墟になったが、今でも形を保っている」
「そこはとんでもなくヤバイところで、何が出るかは知らないが、行ったら正気では帰って来れない」
と、ものすごく好奇心をそそる内容。
当時寮生だった俺は、ある夏の休日に、寮の後輩を無理矢理引き連れて、噂の廃墟へと向かったのさ。
と言っても、廃墟の場所は正確にわからないから、ちょっとしたピクニック気分で山の中に入っていったんだ。
それが甘かった。
高野山の山の中って、同じような木が同じように生えているばかりで、
一度迷ったらなかなか現在位置がわからなくなるんだよね。
面白がって細い獣道ばかり選んでた俺らは、それこそ一瞬にして迷った。
帰り道どころか、今どの山を歩いているのかもわからない。
歩けば歩くほど、より奥に迷い込んでいく感じだった。
【洒落怖】山で道に迷い出会った赤い川続きを読む